遺産の一部を処分してから3か月以上経過した後の相続放棄が受理された事例
相続財産 | 不動産 住宅ローン(後に判明) 数十万円の預貯金 |
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依頼者の被相続人との関係 | 親子 |
争点 | 相続放棄 相続放棄の熟慮期間 |
担当事務所 | 福岡法律事務所 |
- 結果
- 【依頼後・終了時】相続放棄が受理され、債権者からの請求がなくなる
事案の概要
ご依頼者様の父親が、被相続人の事案でした。被相続人は、生前、居住していた住居の住宅ローンを滞納したため、住宅の競売がされていました。 ご依頼者様は、被相続人から、「競売の後、住宅ローンを払わなくてよくなった」と言われていました。被相続人の死後、ご依頼者様が、被相続人の通帳を確認したところ、住宅ローンその他の債務の支払いがなかったため、ご依頼者様は、被相続人には債務がないものと考え、数十万円程度残っていた被相続人の預貯金を引き出し、葬儀費用、携帯電話料金、医療費の支払い等に充てていました。
その後数年経過した後、ご依頼者様に対し、サービサーから、住宅ローンの残債の請求がなされました。
弁護士の対応
まず、預貯金の解約が、法定単純承認に該当すれば、相続放棄が認められません。そのため、法定単純に当たらないことの立証を尽くすことにしました。
また、被相続人の死亡後数年が経過しており、相続放棄の熟慮期間が経過していると評価される可能性がありました。そのため、裁判例を踏まえて、「自己のために相続の開始があったことを知った時」の解釈を主張することにしました。
解決結果
①遺産の使途を、取引履歴、領収書等で立証し、大阪高裁平成14年7月3日決定家庭裁判月報55巻1号82頁等の裁判例を踏まえて、相続債務のあることを全く認識せず、かつ、費消した金額も社会的にみて不相当に高額のものともいえないこと等から、単純承認と評価すべきでないと主張しました。
また、②『相続人が相続財産の一部の存在を知っていた場合でも、自己が取得すべき相続財産がなく、通常人がその存在を知っていれば当然相続放棄をしたであろう相続債務が存在しないと信じており、かつ、そのように信じたことについて相当の理由があると認められる場合には、上記最高裁判例の趣旨が妥当するというべきであるから、熟慮期間は、相続債務の存在を認識した時又は通常これを認識し得べき時から起算すべきものと解するのが相当である』とした裁判例(福岡高裁決定平成27年2月16日判時2259号58頁)を踏まえて、熟慮期間が経過していないとの主張をしました。
その結果、無事、相続放棄が受理されました。 相続放棄の受理結果と、相続放棄手続での主張立証内容を踏まえ、債権者に対し、今後の請求を控えるよう要請し、債権者からの請求もなくなりました。
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