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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
遺産分割調停とは、遺産の分割方法について、相続人全員で話し合っても合意できない場合に利用できる、裁判所の紛争解決手続をいいます。
遺産分割調停では、家庭裁判所の調停委員会が、対立する相続人の間に入って必要に応じて助言や解決策の提案をしながら、遺産の分割方法に関する話し合いを進めます。
では、どうすれば遺産分割調停を利用できるのでしょうか?また、調停を有利に進めるためのポイントや、不利にならないために気をつけるべき注意点などはあるのでしょうか?
ここでは、遺産分割調停の流れを中心に解説しながら、皆様のこうした疑問にお答えしていきます。
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遺産分割調停は、下記のような流れで行います。
次項より、それぞれの手続について確認していきましょう。
遺産分割調停を利用するためには、まずは遺産分割調停申立書を作成し、必要書類を添付したうえで家庭裁判所に提出し、遺産分割調停を申し立てる必要があります。
遺産分割調停申立書は、家庭裁判所に直接出向いて取得するほか、下記リンク先の裁判所のホームページからも取得することができます。
遺産分割調停申立書(PDF)│裁判所HP
なお、調停を申し立てる家庭裁判所は、次の2種類から選択することができます。
また、申立人を1人に絞る必要はありませんが、調停の相手方は申立人以外の相続人全員としなければなりません。つまり、主張が対立している相続人はもちろん、申し立てに関わっていない相続人すべてを相手方に含めて、相続人全員が遺産分割調停に参加できるようにする必要があります。
一般的に必要な書類 |
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遺産に関する書類 |
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相続人の状況に応じて必要な書類 |
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※1:代襲者(代襲相続人)とは、本来相続人となるはずだった被相続人の子供や兄弟姉妹が、被相続人より前に死亡したり、相続放棄以外で相続権を失ったりした場合に、代わりに相続人となる人のことです。 例えば、被相続人の子供の代襲者は孫です。孫が既に死亡している場合等はひ孫、ひ孫が既に死亡している場合等は玄孫……というように代襲相続は続いていきます。ただし、兄弟姉妹の代襲者は甥・姪までです。 ※2:直系尊属とは、家系図を書いたときに縦でつながる親族のうち、父母・祖父母など自分より前の世代のことです。基本的に養父母は含まれません。
遺産分割調停の申立てには、次に挙げる費用がかかります。
なぜ収入印紙代が“1人につき”と定められているのかというと、数次相続が起こった場合、被相続人が複数になるからです。
数次相続とは、被相続人Aが亡くなり相続が発生した後、遺産分割を行う以前に相続人Bが亡くなっていた場合や相続放棄以外で相続権を失ったりした場合に、Bの相続人であるCとDが代わりに相続人となるような事例をいいます。
詳しくは下記の記事で解説しているので、ぜひご一読ください。
遺産分割調停は、申し立てれば必ず受理されて開始するとは限りません。また、相続人の中に住所不明の人がいる場合、家庭裁判所に受理してもらえません。なぜなら、遺産分割調停は相続人全員が参加しなければならないからです。 相続人が確定できていなかったり、居住地がわからなかったりする場合は、相続人全員を調停に参加させることはできません。そのため、遺産分割調停に相続人全員が参加する前提として、相続人が確定できており、全員の居住地がわかっている必要があるのです。
遺産分割調停の申立てが受理されたら、家庭裁判所から、当事者(申立人と相手方全員)に呼出状が届きます。通常、申立てから2週間程度で届くことが多いです。 呼出状には、遺産分割調停が行われる旨のほか、調停を行う日時や場所、必要書類といった、調停に参加するために必要な情報が記載されています。
第1回期日(初回の調停日)を迎えたら、家庭裁判所へ出向き、遺産分割調停に参加します。 調停は、基本的に、申立人と相手方が交互に調停室に入り、調停委員に対して意見を述べることを繰り返して進んでいきます。そして、それぞれの主張を聞いた調停委員が、相続人全員が合意できるように意見の調整を図ります。なお、裁判官は、調停委員から都度状況を聴き取って、全体の流れを把握しています。 このように、遺産分割調停は相続人同士で直接話し合うわけではないので、感情のこじれがあっても比較的冷静に話し合いを進めることができます。通常顔を合わせる必要があるのは、初回と最終回だけです。 第1回期日で合意に至らない場合は、第2回期日が設定されます。第2回期日以降は、調停が成立する見込みがある限り、次回期日が設定されて調停が続いていくことになります。
相続人全員が合意し、話し合いがまとまれば調停が成立します。
調停が成立したら、調停で合意した内容をまとめた「調停調書」が作成されます。
調停調書は、裁判の判決と同じ法的な強制力を持ちます。例えば、調停で家を代償分割することに合意したにもかかわらず、代償金を支払わない相続人がいれば、調停調書を根拠に強制執行を行って、強制的に合意内容を実現させることができます。
調停調書は非常に強い強制力を持つ書類なので、内容に誤りがないか、調停成立前にしっかりと確認するようにしましょう。
調停委員会が相続人全員の合意を得られる見込みがないと判断した場合は、調停不成立となります。この場合、自動的に遺産分割審判に移行します。 遺産分割審判とは、裁判所が遺産の分け方を決め、遺産分割に関する紛争を解決する手続をいいます。 相続人の合意による遺産分割を目指す、遺産分割協議や調停とは違い、裁判所が一方的に遺産の分割方法を決定します。ただし、2週間以内であれば、不服を申し立てることが可能です。 また、審判は、遺産を具体的にどのように分けるかを判断するものですが、特定の遺産の範囲や相続人の範囲といった遺産分割の前提となる事情については、民事裁判で確定する必要があります。 遺産分割審判を利用する際の流れや注意点、メリット・デメリットなど、詳しく知りたい方は下記の記事の解説をご覧ください。
遺産分割審判の流れと注意点遺産分割調停は、成立する見込みがある限り、1~2ヶ月に1回程度のペースで期日が設定されて続いていきます。
遺産分割調停は、基本的に申し立てた家庭裁判所で手続が進められます。実際の話し合いも家庭裁判所内の調停室で行われるので、調停は、家庭裁判所が開廷している平日の日中にしか行われません。
なお、調停期日には当事者全員が家庭裁判所に出頭する必要がありますが、遠方に住んでいるなど、出頭することが難しい人もいるでしょう。このような場合、家庭裁判所が相当な事情があると認めれば、電話会議またはテレビ会議システムを利用して、直接出頭することなく調停に参加することができるようになります。
遺産分割調停が成立する、または不成立が決まるまでは、半年~1年程度かかるのが一般的です。
調停は1~2ヶ月に1回ほど、1回あたり2時間程度をかけて行われるので、平均すると6回前後で終了することになります。
しかし、合意しない相続人が1人でもいたり、遺産や相続人が多い等事件の内容が複雑であったりすれば、調停が長引き決着まで1年以上かかってしまうこともあります。
遺産分割調停を有利に進めるためには、次のポイントを押さえることが重要です。
無断欠席が続く場合、調停は不成立となり、遺産分割審判を行うことになります。
遺産分割調停は、相続人全員が参加して行わなければならないので、相手が家庭裁判所からの呼び出しを無視し、遺産分割調停に出席しない場合には進めることができません。正当な理由のない欠席が何度も続く場合、相手が話し合いに応じて調停が成立する見込みはほとんどありません。そのため調停は不成立となり、基本的に審判に移行します。
ただし、家庭裁判所が相当と判断する場合には、調停に代わる審判という手続により、家庭裁判所に事件解決に必要な法的な判断内容を決定してもらうことが可能です(家事事件手続法284条1項)。なお、家庭裁判所から呼び出しを受けたにもかかわらず、正当な理由なく出頭しない場合には、5万円以下の過料に処せられます。もっとも、実際に過料が科されることはほとんどないのが現状です。
調停は、当事者本人が家庭裁判所に出頭して行うのが原則ですが、裁判所がやむを得ない事由があると認めるときは、例外的に弁護士などの代理人を出頭させることができます。
とはいえ、行われる調停の内容によっては、本人が出頭しなければならない期日もあります。また、事前に家庭裁判所に期日変更申請書を提出することで、調停の期日を変更してもらえる場合もあります。ただし、申請したからといって、必ず期日変更が認められるわけではないのでご注意ください。
遺産分割調停には、いつまでに申し立てなければならないという期限はありません。
とはいえ、なるべく早めに申し立て、遺産分割の方法を決めることをおすすめします。なぜなら、遺産分割調停に期限はなくとも、相続放棄の手続には3ヶ月、相続税の申告手続には10ヶ月という期限があるからです。また、申告期限までに実際に相続手続を行わないと、配偶者控除などの減税制度が利用できなくなってしまう可能性があります。
遺産分割調停中であっても、相続税を仮申告し、納税することは可能です。
相続税は、被相続人が亡くなった日の翌日から10ヶ月以内に申告して納税しなければならず、期限内に遺産の分割方法が決まらない場合でも期限を延ばすことはできません。万が一、期限内に申告・納税できなかったときは、ペナルティとして延滞税や無申告加算税が課されてしまいます。そこで、遺産分割調停の成立までに長期間かかる可能性があるときは、相続税の申告期限を過ぎてしまうおそれがありますので、ひとまず遺産を法定相続分どおりに分割したと仮定して、相続税を仮申告・納税することになります。
遺産分割調停は、次のようなケースで不成立となる可能性が高いです。
しかし、相続問題を取り扱った実績が豊富な弁護士なら、依頼者の意見を法的に正しく主張し、調停委員を味方につけて、話し合いを有利に進められる可能性が高いです。そのため、相手の譲歩を引き出し、調停を成立させることが期待できます。また、調停が不成立となって審判に移行したケースでも、弁護士に依頼していれば、代理人として法的なポイントを押さえた主張・立証を行ってくれるので、裁判官に良い心証を与えて有利な判断が下される可能性を高められます。
遺産分割調停では、法的なポイントを踏まえたうえで、自身の意見を主張・立証しなければなりません。調停委員を味方につけ、調停を有利に進めるためにも、法律の専門家である弁護士のサポートを受けることをご検討ください。 弁護士に依頼すれば、遺産分割調停申立書の作成や必要書類の収集、調停への代理出頭を任せることができます。また、遠方に住んでいる場合、テレビ会議システムや電話会議を利用して調停に参加することが可能ですが、テレビ会議システムが設置されている家庭裁判所は少ないですし、電話会議は代理人弁護士がついていないと認められにくいという事情があります。そのため、特に遠方に住んでいる方は、あらかじめ弁護士に依頼しておくメリットが大きいでしょう。 遺産分割調停は煩雑で時間や手間がかかるので、身体的・精神的な負担を軽減するためにも、ぜひ弁護士に相談されることをおすすめします。まずはお電話で弁護士法人ALGのスタッフにご状況をお伝えください。一緒に最善の方法を考えさせていただきます。