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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
遺産分割審判とは、裁判所が、遺産の分割方法を決定する手続です。 通常、遺産の分割方法を決める際、まずは相続人間で話し合う遺産分割協議を行い、協議が不成立となった場合は、家庭裁判所の調停委員会が間に入って話し合う遺産分割調停を行います。そして、調停を行っても話し合いがまとまらず、調停が不成立となった場合には、遺産分割審判に至ることになります。 遺産分割審判は、遺産分割協議や遺産分割調停とは異なり、相続人間で話し合いを行うわけではありません。成立に相続人間の合意を必要とせず、裁判所が決定を下すため、遺産分割における争いについて最終的な決着をつける手段となります。
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遺産分割審判は、下記のような流れで行っていきます。
家事事件の多くは、訴訟を起こす前にまず調停を経なければならない、という調停前置主義がとられています。その後の人間関係を考慮し、できる限り相続人間の話し合いによって解決を図ることが望ましいと考えられているためです。 遺産分割事件は、調停前置主義の対象となる家事事件に含まれていますが、遺産分割“審判”は、訴訟ではありません。そのため、先行して遺産分割調停を行わず、いきなり遺産分割審判の申立てをすることも可能です。 しかし、実際には、家庭裁判所の職権により、まずは調停に回されることが多いです(=付調停)。そして、調停が不成立となった場合には、自動的に審判に移行されることになります。
遺産分割調停を行わずに遺産分割審判を行いたい場合には、まずは遺産分割審判の申立てをする必要があります。 具体的には、『遺産分割審判申立書』を作成し、必要な書類を添付して家庭裁判所に提出するという流れになります。提出先の家庭裁判所は、相続が開始した地、つまり亡くなった人の最後の居住地(※住民票の住所地よりも実際の居住地が優先されます。)を管轄する家庭裁判所になります。
遺産分割審判の申立てをする際には、『遺産分割審判申立書』のほか、併せて下記のような書類を提出する必要があります。
なお、相続人が誰であるのか、相続人と被相続人との関係性によっては、上記以外の書類の提出が求められる場合もあります。
遺産分割審判の申立てをする際の費用は、手数料として被相続人1人につき1200円分の収入印紙代と、連絡用の郵便切手代がかかります。連絡用の郵便切手代は各裁判所によって異なるため、事前に申立先の家庭裁判所にご確認ください。 なお、手数料としての収入印紙代について、“被相続人1人につき”としていることに、疑問を抱かれる方もいらっしゃるかと思います。これは、遺産分割を行う前にある相続人が亡くなり、新たな相続が開始するという数次相続が起こり、複数の相続について同時に遺産分割手続を行う場合のように、被相続人が複数になるケースもあるためです。
遺産分割調停を行わずに遺産分割審判を行いたい場合には、遺産分割審判の申立てが必要です。 しかし、先に遺産分割調停を行い、調停が不成立となった場合には、自動的に審判に移行されるため、これまで説明してきた遺産分割審判の申立てをする必要はありません。なお、審判の手続は、調停を行った家庭裁判所が引き継ぐことが一般的です。
遺産分割審判の申立てが受理された場合、または調停に相手方が出てこなかったために不成立となり、自動的に審判に移行された場合に、家庭裁判所からすべての当事者に呼出状が届きます。この呼出状により、遺産分割審判が行われること(または審判に移行されたこと)や、第1回期日(審判を行う日時)や、どの地の家庭裁判所で審判の手続が行われるかといったことが知らされます。
第1回期日になったら家庭裁判所に出頭し、審判が開始されます。 審判では、互いに主張と立証を行っていきます。当事者双方の主張と立証が出尽くし、争点が整理できるまで順次期日が設定され、審理が進められていくことになります。また、裁判所が職権で事実の調査を行うこともあります。
遺産分割審判の期日の回数に制限はなく、この期間内に審判を終わらせなければならないというような制限もありません。したがって、争点が整理できるまで順次期日が設定され、審理が進められていくことになります。通常、1回の期日のみで審判が終了することは少なく、1年以上かかるケースが多いです。
遺産分割審判は、裁判所が決定を下すため、相続人間の話し合いによって合意を得る必要はありませんが、話し合いを行ってはならないというわけではありません。審判中であっても、相続人間で話し合う機会を設けられることは多く、合意できそうな場合には、相続人間の話し合い(調停)を進めることができます。相続人間で話し合い、合意し、調停が成立した場合には、審判は終了となります。
当事者双方の主張と立証が出尽くし、争点が整理できたら、裁判所によって審判がなされます。裁判所は、当事者双方の主張内容や立証内容を考慮したうえで遺産の分割方法を決定します。相続人のうち誰の主張が採用されるか、誰の主張も採用されずに裁判所の判断で決定するかは個別の状況によって異なりますが、実際には、法定相続分で遺産分割するという内容で決定が下されることが多いようです。 審判がなされたら、審判の内容が記載された『審判書』が裁判所により作成され、すべての当事者に送付されます。
裁判所が決定した審判の内容に不満がある場合、審判の告知を受けた日の翌日から2週間以内に不服申立て(即時抗告)をし、上級の裁判所に判断してもらうことができます。2週間以内に不服申立てがなされない場合には、審判は確定してしまいます。
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裁判所が決定した審判の内容に不満がある場合には、審判の告知を受けた日の翌日から2週間以内に不服申立てをする必要があります。2週間以内に不服申立てがなされない場合、審判は確定し、審判の内容に不満があったとしても不服申立てができなくなってしまいます。 このように、不服申立てには「審判の告知を受けた日の翌日から2週間以内」という期限があることにご注意ください。
不服申立てをする際には、下記のような書類を提出する必要があります。
・抗告状(※相手方及び利害関係参加人の人数分の写しも添付する)
・即時抗告の理由を証する証拠書類
なお、個別の事情によっては、上記以外の書類の提出が求められる場合もあります。
不服申立てをする際の費用は、手数料として1800円分の収入印紙代と、連絡用の郵便切手代がかかります。連絡用の郵便切手代は、遺産分割審判の申立ての際と同様、各裁判所によって異なるため、事前に申立先の家庭裁判所にご確認ください。
不服申立てがなされた事件について、再度審理を行うのは、上級の裁判所である高等裁判所です。しかし、不服申立ての書類の提出先は、審判をした家庭裁判所になります。不服申立ての際は、書類に記載する宛先と書類の提出先は異なりますので、ご注意ください。
遺産分割審判は、審判の申立先である、相続が開始した地、つまり亡くなった人の最後の居住地を管轄する家庭裁判所で行われます。 ただし、先に行った遺産分割調停から自動的に審判に移行される場合には、審判は、調停を行った家庭裁判所で行われることが一般的です。なお、遺産分割調停は、調停の申立先である、申立人以外の各相続人(相手方)の居住地を管轄する家庭裁判所のいずれか、または当事者間で合意して決めた家庭裁判所で行われます。
遺産分割審判のメリットとして、「確定した審判には法的拘束力があり、審判の内容に従うよう強制執行することができる」ということが挙げられます。 確定した審判には法的拘束力があり、裁判所が作成した『審判書』は、強制執行の根拠となる文書である「債務名義」となります。したがって、相続人のなかに審判で決められた遺産の分割方法に応じてくれず無茶な主張をしてくる相続人がいたとしても、強制執行し、審判で決められた遺産分割を実現することができます。 また、「遺産分割における争いを収束させることができる」ということも、メリットとして挙げられます。遺産分割審判は、相続人間での合意を必要とせず、裁判所が決定を下すため、遺産分割における争いを収束させることができる最終的な手段となります。
一方、遺産分割審判のデメリットとしては、「相続人全員が納得しない結果になるおそれがある」ということが挙げられます。 遺産分割審判において、遺産の分割方法は、相続人間の話し合いによって自由には決められず、裁判所が決めます。先に述べたとおり、相続人のうち誰の主張が採用されるか、誰の主張も採用されずに裁判所の判断で決定するかは、個別の状況によって異なり、実際には、法定相続分で遺産分割するという内容で決定が下されることが多いようです。時間や費用をかけてまで遺産分割審判を行ったにもかかわらず、法定相続分で遺産分割するということになった場合、相続人全員が納得しないことが考えられます。 また、「不動産は売却されるおそれがある」ということも、デメリットとして挙げられます。遺産の分割方法にはいくつかの種類がありますが、裁判所の判断により、不動産について、競売によって現金化して遺産分割するという方法がとられることがあります。他の分割方法を望んでいたとしても、審判においては裁判所が遺産の分割方法を決めるため、このようなケースでは、不動産を売却せざるを得なくなってしまいます。なお、遺産の分割方法についての詳しい内容は、下記の記事をご覧ください。
遺産分割4つの方法遺産分割審判は、遺産分割協議や遺産分割調停とは異なり、相続人全員で話し合って合意をする必要はなく、当事者双方の主張と立証を考慮したうえで、裁判所が決定を下します。そのため、期日に欠席した者がいたとしても審理は進められます。期日に出頭した相続人のみが主張と立証を行い、裁判所が決定を下し、審判は終了となります。
遺産分割審判は、遺産分割調停と同様に平日の日中のみに開かれるため、仕事の都合等で出頭できない場合もあるでしょう。審判の期日に出頭できない場合には、弁護士に代理人として出頭してもらうという方法があります。また、事前に家庭裁判所に連絡し、期日変更申請書を提出することで審判の期日を変更してもらうという方法もありますが、必ずしも期日変更が認められるわけではありませんのでご注意ください。 期日に欠席した者がいたとしても審理は進められます。多くの場合、法定相続分で遺産分割するという内容で決定が下されるため、欠席したからといって特に不利になることはないでしょう。しかし、自身の寄与分を主張したい場合や、他の相続人の特別受益を主張したい場合等には、期日に出頭しなければそれらの主張ができないため、寄与分や特別受益等は考慮されずに決定が下されてしまうおそれがあります。 期日に欠席することで、自身にとって不利な審判がなされる場合もありますので、その際には上記に挙げた対応を検討した方が良いでしょう。
弁護士に依頼することで、遺産分割審判の申立てを代わりに行ってもらうことができます。そのため、『遺産分割審判申立書』の作成や、提出書類の収集といった煩雑な作業をご自身で行う手間が省けます。 また、遺産分割審判の期日に代理人として出頭してもらうこともできます。審判においては、当事者双方の主張と立証を考慮したうえで裁判所が決定を下すため、適切な主張と立証をすることが重要になり、法律知識も必要になります。法律の専門家である弁護士を代理人とすることで、個別の状況に応じた適切な主張と立証をしてもらうことができ、ご自身にとって不利な審判がなされるという事態を防ぐことができる可能性が高くなります。 遺産分割について争いが生じているという状況自体、精神的にも身体的にも負担がかかることです。そのうえ遺産分割審判にまで至っている場合、時間や費用もかかり、負担はさらに重くなってしまうでしょう。このような負担を軽減するためにも、遺産分割審判を行う際には、まずは弁護士にご相談ください。