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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
人が亡くなると、亡くなった人(被相続人)の残した遺産を受け継ぐ相続が発生します。遺産というと、まず家や土地といった不動産や預貯金、株式等が思いつくのではないでしょうか。しかし、これらだけではなく、自動車やバイクも遺産に含まれるのです。 本記事では、自動車やバイクを相続する際の手続について解説します。
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相続した自動車やバイクの名義変更は、必ずしなければならないものではありませんが、自動車やバイクを相続した場合には、名義変更をすることを強くおすすめお勧めします。
法律上は名義変更手続を行わなくても、所有者は、売却する等所有物を自由に処分できます。また、担保にいれることもできます。しかし,自分の権利を対外的に主張するには名義変更が必要になります。例えば、売却時には、事実上買主からも車検証等の提出を求められるので、提出できなければ売りたいときに売れないでしょうません。ほかにも、共同相続人のうちの1人が、自分が相続人だと偽って第三者に売ってしまってトラブルになるといったいうことも考えられます。
こうした事態を防ぐためにも、自動車やバイクを相続したら、必ず早いうちに名義変更をしましょう。
自動車を相続して名義変更をする際、自動車を単独相続するか共同相続するか、共同相続の場合でも、遺産分割協議の結果、確定的に単独所有になるか共有になるかによって、必要になる書類が変わります。 なお、単独相続とは、相続人が1人のみで、(単独) で遺産を所有することになる相続形態をいい、共同相続とは、相続人が複数おり、仮の状態として遺産を共有することになる相続形態をいいます。 それぞれの場合に必要になる書類について、以下にリストアップしたのでご覧ください。
相続人が1人のみで、自動車を単独相続する場合、以下の書類が必要になります。
相続人が複数おり、自動車を共同相続する場合でも、必要な書類は単独相続の場合と大きくは変わりません。 ただし、同じ共同相続の場合でも、遺産分割協議の結果、確定的に、相続人のうちの1人が相続する単独所有になるか、相続人全員が相続する共有になるかによって、必要になる書類が変わってきます。 それぞれの場合に必要になる書類は、以下のとおりです。
相続人が複数いる共同相続の場合で、遺産分割協議の結果、相続人のうちの1人が確定的に相続(単独所有)することになったときには、以下の書類が必要になります。
相続人が複数いる共同相続の場合で、遺産分割協議の結果、相続人全員で相続(共有)することになったときには、以下の書類が必要になります。
必要書類が準備できたら、運輸支局で名義変更の申請をします。 まず、運輸支局に出向き、名義変更に必要な「申請書(OCRシート第1号様式)」「手数料納付書」「自動車税・自動車取得税申告書」という3つの書類を作成します。 次に、登録手数料500円分の印紙を購入して手数料納付書に貼り付け、他の必要書類と共に窓口に提出し、名義変更の申請をします。申請が受理されると、車検証の交付を受けることができます。 最後に自動車税や自動車取得税等の申告を行うことで、名義変更が完了します。
軽自動車について、「相続の対象ではない」とい言われることがありますが、それは誤りです。 軽自動車も相続の対象となります。 なぜこのように誤解されているのかというと、相続に起因する軽自動車の名義変更手続が、普通車の場合と比べて簡略化されているからです。 では、どのくらい簡略化されているのでしょうか?名義変更に必要な書類をリストアップし、手続方法について解説します。
軽自動車の名義変更は、下記の書類を名義変更の申請書に添付し、軽自動車検査協会の窓口に申請することで行います。
上述の相続に起因する普通車の名義変更の場合に対し、軽自動車の名義変更の 場合には、相続人全員が実印を押した「遺産分割協議書」や「印鑑証明書」、「被相続人の戸籍謄本」等の収集が不要です。手続の流れは普通車の名義変更の流れとほぼ同じですが、必要書類がより簡単に収集できるため、手続が簡略化されているといえます。 これらの書類は、被相続人の親族であれば、 1人でも比較的簡単に揃えることができるので、家族なら単独で自由に名義変更をすることができると認識し、「軽自動車は相続の対象外である」と誤解されてしまうことがあるようです。
バイクを相続して名義変更をする際、バイクの排気量や名義変更後の使い道によって、必要になる書類が変わります。 バイクは、道路運送車両法に基づき、排気量別に次のように分類できます。
自動車を相続したときの名義変更の手続と比べて、バイクの手続は簡単だといえます。 それぞれの場合に必要になる書類について、名義変更の流れと併せて、以下で説明します。
排気量が125cc以下のバイクを、原付バイクといいます。 原付バイクは、いったん廃車にしてナンバーを再取得しないと名義変更ができないため、原付バイクを相続したら、廃車手続と名義変更手続を行うことになります。 具体的には、ナンバープレートを管轄している市区町村の役所の窓口に必要書類を提出して、廃車手続と名義変更手続を行います。 また、原付バイクの場合は、廃車手続・名義変更手続ともに費用はかかりません。
原付バイクを相続したときの廃車手続・名義変更手続の申請先と必要書類は、以下のとおりです。
○申請先
ナンバープレートを管轄している市区町村の役所の窓口
○必要書類
排気量が126cc~250ccのバイクを、軽二輪バイクといいます。 原付バイクとは異なり、軽二輪バイクの場合は、被相続人と相続人の居住地を管轄する運輸支局が同じであれば、廃車手続は必要ありません。 したがって、軽二輪バイクを相続して使う予定の相続人と被相続人が同居していたような場合には、ナンバープレートを管轄している運輸支局に必要書類を提出して、名義変更手続を行うだけで済みます。 なお、被相続人と相続人の居住地を管轄する運輸支局が異なり、廃車手続を経てから名義変更をする場合には、以下の費用がかかります。
○廃車手続にかかる費用
・手数料:500円
・用紙代:約100円
○名義変更手続(ナンバー再取得)にかかる費用
・ナンバープレート代:約700円
・用紙代:約200円
軽二輪バイクを相続したときの名義変更(廃車手続を経ない場合)の申請先と必要書類は、以下のとおりです。
○申請先
ナンバープレートを管轄している運輸支局
○必要書類
説明したとおり、被相続人と相続人の居住地を管轄する運輸支局が同じであれば、廃車手続は必要ありません。しかし、より簡便な方法であるとして、廃車手続を経てから名義変更をする方法を選択する方も少なくありません。また、ご自身 に名義変更をしたものの、やはり使う機会がないからと、廃車を選択される方もいらっしゃるでしょう。 どちらの場合にも廃車手続自体は変わらず、ナンバープレートを管轄している運輸支局に、以下の必要書類を提出することで行います。
排気量が251cc以上のバイクを、小型二輪バイクといいます。 軽二輪バイクと同様、小型二輪バイクの場合は、被相続人と相続人の居住地を管轄する運輸支局が同じであれば、廃車手続は必要ありません。 したがって、小型二輪バイクを相続して使う予定の相続人と被相続人が同居していたような場合にも、ナンバープレートを管轄している運輸支局に必要書類を提出して、名義変更手続をするだけで済みます。 なお、被相続人と相続人の居住地を管轄する運輸支局が異なり、廃車手続を経てから名義変更を行う場合には、以下の費用がかかります。
○廃車手続にかかる費用
手数料:約350円
○名義変更手続にかかる費用
ナンバープレート代:約600円
小型二輪バイクを相続したときの名義変更手続(廃車手続を経ない場合)の申請先と必要書類は、以下のとおりです。
○申請先
ナンバープレートを管轄している運輸支局
○必要書類
軽二輪バイクの場合と同様、小型二輪バイクの場合も、直接名義変更をする方法ではなく、廃車手続を経てから名義変更をする方法を選択する方が少なくありません。また、やはり使う機会がなく、廃車を選択される方もいらっしゃるかと思います。 小型二輪バイクの場合も、廃車手続と名義変更手続の前後を問わず、ナンバープレートを管轄している運輸支局に、 以下の必要書類を提出することで、廃車手続を行います。
例えば、形見分けで被相続人の小型二輪バイクをご友人の方が譲り受けることになった場合等、相続人以外の方が遺産である小型二輪バイクを受け継ぐことも考えられます。しかし、ご友人の方は相続人ではないので、当然相続することはできません。 そこで、いったん相続人の代表者が名義変更をして名義人となり、その後相続人以外の人にもう一度名義変更をすることで、相続人以外の人(ここではご友人の方)を名義人とすることになります。 このように、相続人とは別の新使用者がいる場合には、まず相続人に名義変更をし、それから新使用者自身に名義変更をします。この新使用者への名義変更の流れは、自動車であってもバイクであっても変わりません。
相続に起因する、自動車やバイクの名義変更手続について説明してきましたが、理解を深めていただけたでしょうか? 名義変更は強制されるものではありません。しかし、名義変更をしないと、対外的に自分が所有者であることを主張できません。名義変更をしなかったことで生じるトラブルを防ぐためにも、遺産分割が終わったら、すみやか速やか に手続を行いましょう。
相続に関する手続は複雑で、必要となる書類の選択や収集には手間がかかります。 特に自動車を相続する場合、相続人の人数や、単独所有か共有かといった相続後の所有形態によって、名義変更に必要な書類が変わってきます。そのため、何が必要で何が必要でないのか、ご自身だけで判断されるのは難しいかもしれません。 こうした相続手続を明瞭化に するには、専門家である弁護士の手を借りるのが一番です。専門家なら相続手続に精通していますし、生じやすいトラブルにも詳しいので、安心して手続を任せることができます。 弁護士法人ALGには、相続財産の調査や遺産分割交渉等、相続問題に対応するうえで必要な能力に長けた弁護士ら達で構成される「相続チーム」が設けられています。経験豊富な弁護士が問題解決のお力添えをに尽力 いたしますので、少しでもお困りのことがありましたら、弊所への依頼をご検討ください。