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相続人(相続する人)が被相続人(亡くなった人)に対して療養看護をしたことで、被相続人が自らの看護や介護にかかる費用を支出せずに済んだ場合、療養看護型の寄与分が認められます。 この場合の療養看護とは、被相続人につきっきりで看護や介護をしていたといえる程度でなければならず、日常生活の合間に食事の世話をしていたというケースや、入院中の被相続人をたまに見舞っていたというケースではまず認められません。
それでは、療養看護型の寄与分が認められるのはどのようなケースなのでしょうか?以下に具体例として、療養看護型の寄与分が認められた裁判例では実際にどのような介護がなされていたのかを記したので、参考にしてください。
療養看護型の寄与分を認めてもらうには、前提として、以下に挙げた寄与分の要件をすべて満たす必要があります。
寄与分の要件にある「特別の寄与」とは、被相続人との身分関係から通常期待される程度を超えるような貢献をいいます。親族間には扶養義務があるので、病気になった被相続人の身の回りの世話をするのは、ある程度は当然のこととみなされます。そのため、扶養義務の範囲を超えるような貢献でなければ、寄与分は認められません。 療養看護型で特別の寄与と認められるための要件は、具体的には以下のとおりになります。
民法で扶養義務があるとされている関係性は、基本的には「夫婦、直系血族(祖父母・父母・子・孫)、兄弟姉妹」となります。 扶養義務は「生活保持義務」と「生活扶助義務」に区別することができます。生活保持義務は、夫婦間と親子間(親から未成熟子に対して)が対象で、自分の生活水準と同程度を維持するという強い義務です。一方、生活扶助義務は、親子間(親と成熟した子)、祖父母と孫の関係、兄弟姉妹間が対象で、経済的に余力があれば援助するという弱い義務です。 ただし、扶養の程度や方法は、当事者間で話し合って決めるべきとされているため、どこまでが扶養義務の範囲内の行為かという具体的な指標があるわけではありません。
被相続人に療養看護が必要だったかどうかの判断基準として、一般的には要介護認定の結果を参考にします。 要介護認定とは、介護保険のサービスを受けるために必要な審査で、申請の手続きは対象者が住んでいる市区町村の窓口で行います。要介護認定の申請をすると、対象者の身体機能・起居動作、生活機能、認知機能、精神・行動障害、社会生活への適応等の程度に応じて、要支援1~2または要介護1~5のどれかに認定されます。7段階のうち、最も軽度な状態が要支援1、反対に最も重度な状態が要介護5となります。 療養看護型の寄与分が認められるのは、被相続人が「要介護2」以上の状態であったことがひとつの目安となっています。
要支援とは「ほぼ自力で日常生活を送れるが、将来的に要介護状態となるおそれがあるため、予防のための支援が必要な状態」をいい、要介護とは「自力で日常生活を送るのが困難で、介護が必要な状態」をいいます。 それぞれの段階別の具体的な状態の目安は、以下のとおりです。
要支援1 | 日常の基本動作(食事、移動、排泄等)はほぼ自力で行うことができるが、一部の日常の複雑な動作に介助(見守りや手助け)を要する状態。 | 要支援2 | 日常の基本動作はほぼ自力で行うことができるが、要支援1よりも日常の複雑な動作を行う能力がやや低下している状態。 | 要介護1 | 要支援2よりも、さらに日常の複雑な動作を行う能力が低下しており、部分的に介護を要する状態。問題行動や理解力低下がみられることがある。 | 要介護2 | 日常の基本動作にも部分的に介護を要する状態。問題行動や理解力低下がみられることがある。 | 要介護3 | 日常の基本動作にほぼ全面的に介護を要する状態。いくつかの問題行動や全面的な理解力低下がみられる。 | 要介護4 | 介護なしでは日常生活を送ることがほぼ困難な状態。多くの問題行動や全面的な理解力低下がみられる。 | 要介護5 | 要介護状態のうち最も重度な状態。介護なしでは日常生活を送ることができず、意思の疎通も困難。 |
寄与分は、寄与行為があれば自動的に認められるというものではありません。寄与分を認めてもらうには、遺産分割協議(相続人間の話合い)の場で自ら主張する必要があります。なお、主張の際は、寄与行為について具体的にわかるような証拠を用意しておくことが重要です。 寄与分の主張方法について詳しく知りたい方は、以下のページをご参照ください。
相続の場で寄与分を主張したい!方法や流れは?療養看護型の寄与分を認めてもらうために、「特別の寄与といえるような療養看護をしていたことが客観的にわかるもの」を証拠として確保しておきましょう。例えば以下のような資料が、主張の際に有効な証拠となり得ます。
療養看護型の寄与分は、一般的には認められにくい類型といわれています。親族間には扶養義務があるので、特別の寄与と認められるハードルがかなり高くなるためです。また、平成12年の介護保険制度の導入以降、訪問看護等のサービスが受けやすくなり、寄与者の負担が一定程度軽減されたことも、そのハードルを上げる要因となっているようです。 さらに、療養看護型は金銭出資型に比べて寄与分額がわかりにくいうえに、相続人間の感情的な対立も起こりやすいといえます。 このような事態に対処するためには、やはり寄与行為の証拠をしっかりと残すことが重要です。また、被相続人の生前から、金銭や労力の提供に偏りが出ないよう親族間で協議し、その結果を覚書等の文書にしておくと良いでしょう。
被相続人に療養看護が必要だったかどうかを判断するひとつの目安として、被相続人が要介護2以上の状態であったことを挙げましたが、要介護1以下では絶対に特別の寄与と認められないというわけではありません。 そのような場合であっても、被相続人の生前の状態や療養看護の内容、費やした時間等が考慮されて、寄与分が認められることもあります。
ここで、療養看護型の寄与分が認められた判例を紹介します。以下の裁判例では、要介護認定については言及されていませんが、具体的な介護の内容から寄与分について判断がなされています。
民法改正前に、相続人の配偶者の寄与が、相続人の寄与分として考慮された裁判例になります。
大阪家庭裁判所 平成19年2月8日審判
本件の法定相続人は被相続人の子4名でしたが、そのうち相続人Aに対して寄与分が認められました。 相続人Aは被相続人宅の隣の家に住んでおり、被相続人の妻が入院して以降、相続人Aの妻と共に被相続人の家事全般の世話をしていました。 その後、被相続人の妻が死亡し、被相続人に認知症の症状が顕著に出るようになってからは、被相続人は常時見守りが必要な状態となりました。相続人Aは被相続人に毎日3度の食事を相続人A宅でとらせるようにしたほか、排泄の介助をする等、約3年間献身的に介護を行いました。 裁判所は、被相続人が認知症となるより前の被相続人に対する日常生活上の世話については、親族間の扶養義務の範囲内であり、特別の寄与とまではいえないと判断しました。しかし、被相続人が認知症となった以降の約3年間の介護については、親族による介護であることを考慮したうえで、1日あたり8000円程度と評価し、876万円を相続人Aの寄与分として認めました。
療養看護型の寄与分を認めてもらうには、様々な要件を満たす必要があり、さらにそれを裏づける証拠を確保しておくべきだということがおわかりいただけたかと思います。 しかし、「自分のケースが要件を満たせていないかもしれない」「ろくに証拠が残っていない」という場合であっても、弁護士が介入すれば寄与分を主張できる可能性もあるので、諦めずにぜひ一度弁護士へご相談ください。
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療養看護型の寄与分額は、以下の計算式を用いて算出します。
療養看護型の寄与分額の計算式は、療養看護のために第三者を雇ったとしたら、どのくらいの費用がかかったかということを想定しています。 計算式にある「付添介護人の日当額」は、介護保険における介護報酬基準を参考にして決めます。介護報酬基準では、要支援度・要介護度や介護サービスの種類に応じて報酬基準額が定められています。
介護報酬基準は、看護師や介護士等の専門の資格を持っている人への報酬を前提としています。そのため、親族が介護をした場合、有資格者ほどのスキルを備えていないことや、扶養義務を負う親族と第三者とでは報酬額も異なるべきであることが考慮され、一定程度減額される可能性があります。
計算式にある「裁量的割合」は、寄与行為に関する一切の事情を考慮して、調整する意味合いを込めて乗じます。考慮される事情としては、被相続人との身分関係、被相続人の健康状態、療養看護をするに至った経緯、専従性の程度、寄与者が療養看護によって失った財産等が挙げられます。 ただし、以上を踏まえて計算式に則って寄与分額を算出しても、遺贈や遺留分との兼ね合いがあるため、実際の金額は計算結果よりも低額になるおそれがあることを理解しておきましょう。
すでに療養看護型の寄与分の要件について触れましたが、実際に要件に当てはまるかどうか自分で判断しかねる事例もあるかと思います。 以下のようなケースは、寄与分として認められるのでしょうか?順にみていきましょう。
被相続人によっては、入院や介護施設への入所を拒んだり、在宅介護であっても他人に介入されたくないという要望があったりする方もいらっしゃるかと思います。そのような事情があって親族による介護が行われていた場合も、療養看護型の寄与分は認められる可能性があります。
民法では、被相続人の子の配偶者は法定相続人にあたらないとしているため、被相続人の子の配偶者が遺産を相続することはできません。ただし、被相続人の生前に、被相続人と被相続人の子の配偶者が養子縁組を行えば、当該配偶者にも相続権が与えられるため、当該配偶者個人としての寄与分を主張することができます。 上記以外に被相続人の子の配偶者の貢献を金銭的に評価してもらうには、寄与分として主張するのではなく、遺言書に「子の配偶者に遺贈する」という文言を残してもらう、もしくは、「特別寄与料」の請求をするという方法があります。後者の特別寄与料の請求制度を利用すれば、相続人以外の被相続人の親族(本事例の場合、被相続人の子の配偶者)であっても、相続人に対して金銭請求をすることができます。
相続人以外でも遺産が欲しい…寄与分を認めて貰うことはできる?相続人が自ら介護をする代わりに、付添介護人を雇うための費用等を負担していた場合も、寄与分は認められます。寄与分額については負担した実費を基準として算出しますが、扶養義務の範囲を超えるほどの金額でなければ、特別の寄与とはみなされないでしょう。 このようなケースは、療養看護型ではなく金銭出資型の一態様とする考え方もあります。なお、金銭出資型の寄与分額の計算式は、「贈与額×貨幣価値変動率×裁量的割合」となります。 金銭出資型の寄与分について詳しく知りたい方は、以下のページをご参照ください。
相続における金銭出資型の寄与分って?ただお金を出せば良いわけではない?!療養看護型の寄与分を評価する際に、介護と家事を区別してそれぞれの寄与分額を算定することはありません。療養看護の内容や費やした時間等が総合的に判断されるため、介護と家事を両方こなしていた場合は、家事については他人に任せていた場合に比べて、一定程度高額な寄与分が認められる可能性はあるでしょう。
療養看護型の寄与分では、扶養義務の範囲を超えるほどの貢献といえるかどうかが重要なポイントとなります。したがって、ご自身のこれまでの努力を評価してもらうためにも、どれだけ貢献したかをしっかりと証拠に残しておく必要があります。 しかし、療養看護は寄与者以外の相続人も手伝っていたというケースも多く、他の相続人からも寄与分を主張されると、感情的な対立に発展する傾向があります。 そのような場合であっても、弁護士であれば事実関係を整理して、依頼者の寄与分について効果的な主張をすることができるため、遺産分割協議の段階で交渉がスムーズに進む可能性があります。お困りの際には、ぜひお気軽にご相談ください。