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監修福岡法律事務所 所長 弁護士 谷川 聖治弁護士法人ALG&Associates
遺言書が見つかったものの、遺言者(遺言書を残した人)が生前に認知症を患っていた場合や、遺言書の内容が、遺言者の生前の意思とはかけ離れたものであるように思われる場合等、その遺言書は果たして有効なのかどうかと疑われることもあるでしょう。 そこで、遺言書が無効であると主張する人がとることのできる手段として、「遺言無効確認訴訟」の提起があります。 このページでは、遺言の有効性を争う裁判、「遺言無効確認訴訟」に関して、事例を交えながら解説していきます。
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「遺言無効確認訴訟」は、裁判所に、遺言が法律的に無効である旨の確認を求める手続です。原告の勝訴判決が下され、遺言が無効であることが確認されれば、その遺言内容に則った遺産の帰属を防ぐことができます。 遺言無効確認訴訟を提起できる人、つまり原告となることができる人は、遺言が有効であるか無効であるか争うことについて法律上の利害関係を有する人(=法定相続人や受遺者)です。 また、下された判決の効力は、あくまでも訴訟を行った当事者間でのみ有効です。すべての法定相続人や受遺者に判決の効力を及ばせるには、原告となる人以外のすべての法定相続人や受遺者を被告とする必要があります。
遺言を残すには、遺言を残すという行為の意味と、その結果について判断する能力、すなわち遺言能力が必要です。認知症を患うと、判断能力が低下して事理弁識能力が失われることもあるため、遺言能力が喪失してしまうこともあります。そのため、遺言者が生前に認知症を患い、事実として判断能力が低下していた場合、遺言を残した時点ですでに遺言能力が失われていたと主張され、遺言無効確認訴訟に発展するケースがあります。
民法では、詐欺や強迫によって真意に基づかない意思表示をしてしまった場合に、意思表示を取り消すことが認められています。遺言も意思表示の一種です。 例えば、相続人に強迫され、遺言者の意思に反する内容の遺言書を書いてしまったというような事情が疑われるケースでは、遺言者の真意に基づかない意思表示といえるので、遺言無効確認訴訟が提起されることがあります。
遺言は、遺言者の真意に基づいてなされていることを証明するために、厳格な形式に則っていることが要求されます。法律で定められた形式に反している(=方式違背)遺言は、無効となります。例えば、自筆証書遺言であるのに押印がない等、規定の形式を満たしていない場合はその遺言は無効となるため、遺言無効確認訴訟の対象になることがあります。
遺言が無効になる原因はいくつかありますが、明らかに偽造されたものとわかる、あるいは押印がないといったような、見てすぐに方式違背であると判断できる場合を除き、遺言が本当に有効かどうか判断するのは非常に難しいでしょう。 遺言者の生前の意思と遺言内容があまりに違い、遺言が偽造されたものなのではないかと疑われている方や、定められた遺言の形式に則っておらず、遺言が無効なのではないかと思われている方は、ぜひ弁護士にご相談ください。遺言が無効である疑いが強い場合には、弁護士が代理人として遺言無効確認訴訟を追行いたします。
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遺言について争いになる主な原因は、以下の7つです。1つでも該当すれば、その遺言は無効になってしまいます。 無効になってしまう遺言について、具体的に説明します。
遺言でいう方式違背とは、遺言書を作成するうえで、法定の形式に違反してしまっていることをいいます。 遺言は重大な意思表示であるため、遺言を残す人の真意に基づいて作成されなければなりません。そして、その遺言が遺言者の真意に基づいて作成されたことを証明する手段として、厳格な形式に則る必要があるのです。 遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があり、方式違背の内容もそれぞれ異なります。
自筆証書遺言: 自筆証書遺言の場合、次のような問題があると無効になるおそれがあります。
公正証書遺言: 公正証書遺言の場合、次のような問題があると無効になるおそれがあります。
秘密証書遺言: 秘密証書遺言の場合、次のような問題があると無効になるおそれがあります。
遺言能力とは、自身の財産や身分関係等について十分に把握したうえで、遺言をするという行為の意味と結果について判断する能力であり、遺言をするために必要となります。さらに、15歳以上でなければ遺言を残すことはできません。 遺言能力の有無について争われた裁判例によると、遺言能力の有無は、①医師の診断、②遺言内容、③遺言を残すに至った動機、経緯、④遺言者と受遺者の関係等を総合的に考慮して判断するのが一般的なようです。 認知症を発症すると、一律に遺言能力がなくなると思われている方もいらっしゃいますが、認知症を発症していても、判断能力が一定程度あるといえる場合には遺言能力が認められます。
錯誤とは、内心と表示上の意思とに矛盾があるのに、本人は矛盾があることを知らない状態をいいます。 民法の規定により、法律行為の要素に錯誤があったために意思表示をした場合、つまり、それがなければ意思表示はしなかっただろうと考えられるほど重要な錯誤があった場合には、その意思表示は無効になります。したがって、法律行為の要素に錯誤があったために遺言をした場合、その遺言は無効になります。 例えば、遺言者のペットの世話を死後してくれることを条件とする負担付遺贈をしようとしたものの、その条件を付言事項として記述してしまい、単なる遺贈をしてしまったような場合、当該遺言は無効となるでしょう。
共同遺言とは、複数人が同じ遺言書で遺言することをいいます。民法で禁止されており、共同遺言がなされたとしても無効になります。 なぜなら、共同遺言では互いに遠慮し合い、遺言者それぞれの自由が完全には保証されないおそれがあるからです。例えば、互いに気を遣ったために遺言内容が真意に基づかないものになってしまったり、一人が遺言を撤回したくても、ほかの遺言者と意思が一致せず撤回できないといったように遺言の撤回の自由を妨げられたりしてしまうこと等が挙げられます。
民法によると、詐欺・強迫によってなされた瑕疵ある意思表示は取り消すことが可能です。この点、他人から詐欺・強迫を受けてした遺言は、遺言者の真意に基づいた遺言ということはできないため、瑕疵ある意思表示といえます。したがって、詐欺・強迫を受けて残した遺言は無効となります。
遺言者は、原則として自由に自身の財産の分配を決め、遺言を残すことができます。もっとも、完全な自由が保障されているわけではなく、社会常識に照らして到底是認することができない内容等、公序良俗や強行法規に違反する内容の遺言を残すことはできません。 例えば、愛人に全財産を遺贈するといった内容の遺言は公序良俗に違反するので、無効となるでしょう。
遺言者は、新しい内容の遺言書を残すことで、すでに記した遺言を撤回できます。ただし、遺言の撤回をなかったことにする、つまり、遺言の撤回を一度してしまったら、それを取り消すことは原則としてできません。 もっとも、詐欺・脅迫によって遺言が撤回されたり、遺言書に「撤回した遺言の効力を復活させる」等の記載があったり等すれば、遺言者の意思は明らかであるため、例外的に「撤回の撤回(取消し)」が認められる場合もあります。
遺言が無効になる原因は主に7つありますが、それぞれの原因に応じて、立証に必要な証拠等は異なります。日付や署名、押印がない等、明らかに法定の形式に則っていない場合はともかく、遺言能力の欠如や錯誤による無効等を立証するには、専門的な知識が必要になります。 そこで、無効原因があるのではないかとお考えの方は、弁護士に相談することをご検討ください。ご依頼いただければ、遺言書の確認から遺言無効確認訴訟の代行まで、責任をもって行います。また、遺言無効確認判決が下った後の遺産分割協議の代理もお任せいただけますので、ぜひ弁護士にご相談ください。
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遺言無効確認訴訟における原告は、遺言が「無効」であることを主張立証し、裁判官に遺言が無効であるという心証を抱かせる必要があります。このとき、ただ遺言の無効を主張するのではなく、遺言の無効を基礎づける具体的な事実を証明するための客観的な資料を、証拠として準備することが重要になります。 なお、遺言の方式によって、争われる内容や立証に必要とされる証拠等も異なってきます。 例えば、自筆証書遺言の場合で自署性が争われる場合には、筆跡鑑定のため、遺言者の筆跡に関する資料(遺言者の日記やメモ)等が必要となるでしょう。また、遺言能力が争われる場合には、遺言者の病状についての医師の診断書や精神心理学的検査結果等が必要となることがあります。
遺言無効確認事件は家事調停の対象ですので、調停前置主義により、訴訟を提起する前に家事調停を申し立てなければなりません。もっとも、当事者たちの主張があまりにも食い違っている等、解決が難しいと思われるときには、家事調停を行わずに訴訟を提起することが認められる場合もあります。 遺言無効確認訴訟では、その遺言が無効であると主張する法定相続人が原告となります。一方、受遺者や遺言が有効であると主張する法定相続人が被告となることが多いです。なお、必ずしもほかの法定相続人すべてを被告とする必要はありませんが、判決の効力は訴訟の当事者のみに及びます。判決後にふたたび遺言の有効性について争いになることを防ぐためにも、すべてを被告としておくべきでしょう。
遺言無効確認訴訟において無効確認判決が下され、原告が勝訴したとしても、原告と被告の当事者間で遺言が無効であることが確認されただけです。したがって、遺産を法定相続人間でどのように分配するかという遺産分割の問題は生じますので、法定相続人全員で遺産分割協議を行わねばなりません。 また、すでに遺言に基づいた遺産分割等が行われていた場合、所有権移転登記抹消登記手続請求訴訟、不当利益返還請求訴訟を提起して遺産を元あった状態に戻し、遺産分割協議を行います。 なお、遺産分割協議や遺産分割調停の流れについて、詳細は以下の記事に説明を譲ります。
遺産分割協議の流れと注意点 遺産分割調停の流れ遺言無効確認請求を棄却する旨の判決が下され敗訴した場合には、訴訟の当事者間で遺言が有効であることを前提とせざるを得ません。したがって、遺言に基づいた遺産分割等を行うことになります。 このとき、遺言によって、自身の相続分のうち遺留分が侵害される法定相続人は、遺留分侵害額請求訴訟を提起することができます。もっとも、遺留分侵害額請求権の行使期限は1年と定められているので、遺言無効確認請求を主位的な請求として設定したうえで、予備的に遺留分侵害額請求を行う訴訟を提起すると、行使期限を気にすることなく訴訟を進められるでしょう。 遺留分や遺留分侵害額請求について、詳細は以下の記事に説明を譲ります。
遺留分って何?不公平な相続割合で揉めないためには 遺留分侵害額請求とは?相続分に偏りがある場合の注意点遺言無効確認訴訟に時効はありません。 もっとも、証拠は時間の経過に伴い散逸してしまうため、時が経つにつれて立証が困難になります。また、遺言が有効であることを前提とした遺留分侵害額請求を行うことができるのも、相続が開始したことおよび遺留分が侵害されている事実を知った日の翌日から1年間と定められています。遺言無効確認請求が棄却された場合に備え、なるべく早いうちに遺言無効確認訴訟を提起することをおすすめします。
遺言執行者が存在している場合、必ずしも遺言執行者を被告にしなければならないわけではありませんが、補助参加制度を利用する等、何らかの形で訴訟に参加させる必要があります。他方で、遺言執行者のみを被告にしなければならないわけではないため、相続人を相手方にする事も出来ます。遺言執行者と相続人をそれぞれ被告にすることは二律背反の関係にはないため、どちらを被告にする事もできます。 相続人を被告に加えた方が望ましいですが、相続人全員を把握できないとなると訴訟提起が困難になるため、このような場合は遺言執行者のみを被告とすることが望ましいです。
遺言書が無効かどうか明らかでない場合には、まず、ほかの相続人の意見を聞いてみましょう。 ほかの相続人も遺言書が無効ではないかと疑い、信頼性に欠けると思っているような場合には、相続人全員の合意を得て遺言書を無効として扱うことができます。このように遺言書を無効として扱う場合には、相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。 一方、他の相続人と意見が対立し、遺言が無効かどうか結論に達しない場合には、遺言無効確認訴訟を提起し、遺言の有効性について争うことになります。
遺言を無効とする判決が下されると、遺言は当初から無効であった扱いになります。そのため、たとえ請求が認められる前であっても、遺言を根拠として遺産を持ち出したのであれば、無効である遺言に基づき遺産を処分したということになります。これは法律上の根拠なく利益を得たといえるため、不当利益返還請求をすることができます。
ここまで遺言無効確認訴訟について説明してきましたが、遺言の無効を訴える手続について理解を深めていただけたでしょうか。 「遺言書が法定の形式に則っていないのではないか」、「もしかしたら偽造されたものなのかもしれない」等、遺言書の有効性についてお悩みの方もいらっしゃるでしょう。そのような方は、弁護士法人ALGにご相談ください。 弊所は、民事・刑事事業部という、相続問題等の豊富な経験を持つ弁護士で構成されたチームを設置している、相続に関して高い専門性を有する弁護士事務所です。大切な方を亡くされ、傷心のご遺族のご負担が少しでも軽くなるよう、迅速な対応で問題の解決を図りますので、ぜひ弊所にご相談ください。